NO.8 千代大海

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◆闘魂・流血、悪魔のキューピー千代大海。今の幕内のお相撲さんで、誰を一番応援しているかと尋ねられれば、小生は迷わず「千代大海!」と答える。若い、強い、元気が良い、プチプチした体つきも可愛い。九重親方(=小さな大横綱・千代の富士)が育てた千代大海は、体型も取り口も師匠とは全くタイプが違う。そういう所に九重親方の、師匠としての優れた才能を計り知る事が出来る。
◆だが、この二人は何処かが似ている。例えば、千代大海が初の優勝を決めて部屋に帰って来た時、或いは、大関昇進の口上を述べた時、二人が並んでいる姿は、なんだか本物の親子の様に見えた。大関昇進の時、大きな体を小さく丸めて手をつく千代大海の姿、傍らには小さな体の大横綱が付き添う。「親父、小さくなっちゃったなあ。」と言う、千代大海の声が聞こえる様だった。
◆物心ついた時既に父親は亡く、思春期には荒れ放題だったという龍二少年が、厳しい相撲の世界に入って、初めて本物の「自分より強い親父」に巡り合えたのではないかと、つい深読みして考えてしまう。昨今、「実の親による児童虐待」という最も悲惨な形で、家族という箱が壊れてしまっている事が、明るみに出てきている。本当は、とっくの昔に壊れているのに、大多数の人間は気付かなかったのだ。
◆「本物の家族」、そんな夢の様な存在は、角界に代表される様な、歴史が長い上に封建主義が守られている所にしか、残っていない。千代大海の活躍を見るに付け、いちいち相撲と関係無い事を考えてしまうのが、小生の俗人たる証拠である。(1999年・記)

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